『ボランティア』

ボランティア―もうひとつの情報社会 (岩波新書)

ボランティア―もうひとつの情報社会 (岩波新書)

■読了文献。63冊目。金子郁容『ボランティア:もうひとつの情報社会』。15年も前に書かれた本。著者曰く、ボランティアとは、困難を抱えた人に遭遇したとき、「相互依存性のタペストリー」のなかで、それを「他人の問題」にしない、傍観者でいないということを選択することである。そして、そうした選択を行うということは、自らを「自発性パラドックス」の渦中に投げ込むことを意味する。ボランティアは、ボランティアとして相手や事態に関わることで自らをバルネラブル(ひ弱)にする。ボランティアが自ら進んでバルネラブルな場に自らを投じるのは、ボランティアに固有の「報酬」があるためである。ボランティアの「報酬」とは、その人がそれを自分にとって「価値あり」と思い、しかもそれを誰か他の人の力によって与えられたものだと感じるときの、その「与えられた価値あるもの」なのだ、とのこと。以下感想。著者は「ボランティアする側/される側」の間の社会的関係を「尊厳のある対等な関係」としているが、その根拠として、両者に共通する「自らをバルネラブルにする」という価値観をあげる。包括的なカテゴリーの創出による、既存の分割線の相対化という戦略。しかしどう考えても、「ボランティアする側」の弱さと「される側」の弱さは「同じ」ものとはいえまい。