『「開発」の変容と地域文化』

「開発」の変容と地域文化 (青弓社ライブラリー)

「開発」の変容と地域文化 (青弓社ライブラリー)

■読了文献。37冊目。水内俊雄他『「開発」の変容と地域文化』。戦後日本の「開発」の諸相とそれがもたらした地域の生活・文化の変容に関する論文集。パルテノン多摩の連続講座「「開発」と地域社会」(2006)がもとになった企画。「国土開発」という発想の起源、「郊外」、「過疎」、「観光開発」、「開発と文化」など、さまざまな切り口から「開発」の諸相に光をあてるというのがねらいなのだろうが、各論文が対象とする地域や時代があまりにばらばらすぎて、統一感がなさすぎる。切り口の多様性を強調したいのであれば、せめて対象にもっと統一感を持たせるべき。あるいはまた、共通テーマ「「開発」と地域社会/文化」のほうを際立たせたいのであれば、それぞれの論文がこの共通テーマとどういう関係にあるのか、それぞれの論文の位置づけを丁寧に示してくれるような「総論」的な一章を新たに設ける必要があったのではないか。残念ながら本書はそのどちらでもない中途半端さの中にある。思いつき的な連続講座がその手抜きな部分を残したままで形にされてしまったりすると、こういう無様なものになる。「編集」という発想が抜けると、敷居の高いものが出来上がる。そういうものの一例として。