『情報編集力』

情報編集力―ネット社会を生き抜くチカラ

情報編集力―ネット社会を生き抜くチカラ

■読了文献。36冊目。藤原和博『情報編集力:ネット社会を生き抜くチカラ』。出版が2000年。公立校の完全週休二日制がスタートする前、「学力低下」言説が席巻する以前の、能天気な雰囲気があちこちに漂う、旧きよき時代の対談本。「数学力」よりも「ロジックするチカラ」を、「国語力」「英語力」よりも「コミュニケーションするチカラ」を、「理科学力」よりも「シミュレーションするチカラ」を、「社会科学力」よりも「ロールプレイングするチカラ」を、そしてそれらを総称したものが「情報編集力」だというのが本書の趣旨であり、当時の自分もそれに素直に共感していたわけだが、にもかかわらず、そうした議論は「階層社会論」や「学力低下論」のもとでは人びとに訴えかける力をほとんど持ち得なかったわけで、それはいったいなぜなのか。そこのところをクリアしないと、2000年代後半の現在に通用する議論にはならない。思うに、当時の議論にかけていたのは、「情報編集力」が「生きる力」とかだけじゃなくて「教科教育においてもより有効だ」といった語り口だったのではないか。