『「リアル」だけが生き延びる』

「リアル」だけが生き延びる (That’s Japan)

「リアル」だけが生き延びる (That’s Japan)

■読了文献。33冊目。平田オリザ『「リアル」だけが生き延びる』。価値観や感受性の異なる他者どうしである人びとの間でいかにして共通前提を構築していくのか。そのための方法論として有効なのが演劇である。「市民社会における合法的な革命」手段としての演劇。とまあ、こんなプロットの語りおろし本を作ろうという企画だったのだろうが、聞き手の側に濃く深い掘り下げが皆無というか主語や視点が不在というかで、広く浅く(演劇というジャンルでなくても)割とどこでも聞けるような話しか引き出せていない。オチもお約束な「多様性」礼賛で終わっていて、激しく期待外れであった。仮に演劇が共通前提づくりに有効であるとして、演劇のもつどの部分が、どのような意味で有効であるのか、演劇が届かない地点はどこであるのか、そういったことを語り手に言語化させることに、果てしなく失敗している。聞き手側のあからさまな力不足。ということで、次はちゃんとこの人自身が書いたものを読もう。