香山リカ、佐高信 『チルドレンな日本』
- 作者: 香山リカ,佐高信
- 出版社/メーカー: 七つ森書館
- 発売日: 2006/06/01
- メディア: 単行本
- クリック: 3回
- この商品を含むブログ (8件) を見る
ひと言で表すと、本書の面白さは、その無軌道さや率直さにあるのだと思う。対談集というとやや硬い。正確には「居酒屋談義」と呼ぶくらいがちょうどよいかもしれない。誰に気兼ねするでもなく、ただ興味のむくままに接続されていくコミュニケーション。誰もが読みやすい自由さが魅力だ。
この「居酒屋談義」形式は、批評内容にも深く反映されている。従来、大衆や弱者、少数派の立場に立ち、その矛先を権力や国家に向けて批評や批判を展開してきた左翼評論家と精神科医は、本書でその対象を「お子ちゃまな彼らが跳梁跋扈する幼稚園チックなこの社会」そのものにまで拡大する。権力を批判し大衆を擁護する左翼言論の「お約束」を踏み外す自在さが現れた一面であろう。自らの無意識の前提をも踏み破るこうした試みこそが、硬直した左翼言論を活きた言葉へと再生させてくれるのではないだろうか。
本書の一部は、今年四月に酒田市の東北公益文科大学で開かれた公開対談「テレビの夢と罠」を収録したものである。「小泉改革」やら「テレビ政治」やらが地方にもたらしたものの重さを思うとき、本書の言論が地方にて生成したということに、つい象徴的な意味を読み込みたくなってしまう。深読みのしすぎであろうか。*1