『アメノナカノ青空』

アメノナカノ青空 (角川文庫)

アメノナカノ青空 (角川文庫)

韓国映画『アメノナカノ青空』をレイトショーで。主人公カップルの女の子のほうが病におかされていて最後に死んでしまう、という基本設定は、先日観た『消しゴム』とほとんど同じ。『消しゴム』はいまいちだったが、こちらは非常に楽しめますた。この差異はどこからくるのか。ヒロインの女の子が好みの思うにそれは、『消しゴム』とは異なり、『青空』は、状況説明やら人物描写やらを台詞に頼っていないというのが大きいのかもしれない。『消しゴム』はそういうシリアスな葛藤やら苦悩やらを台詞で人物に語らせてしまっていて、その奥行きゼロの薄っぺらさが救いがたかったわけで。『青空』では、表面で交わされる軽薄なやりとりをひたすら反復的に描くことで、逆説的にその奥底の真意がほのめかされる。知らないふりをする優しさとか、笑ってごまかす配慮とか。その落差や奥行きにこそリアリティを感じるわけである。