移転後の香澄町フォーラムへ、初めて足を踏み入れる。アンコール上映の『下妻物語』(2004)。
ロリータの桃子(
深田恭子)とヤンキーのイチゴ(
土屋アンナ)の妙な友情を描いた青春コメディ。物語の舞台は
茨城県下妻市。情報社会化/消費社会化の波が及んではいるが、うわべは何の変化も感じられない地方郊外の田園風景。
ジャスコを遠景に、田んぼのあぜ道を、日傘を手に歩くロリータという絵は、郊外化された田園地帯のどうしようもない閉塞感をとてもうまく形象化していると思う。その意味で思わず連想してしまったのが、
岩井俊二の『
リリイ・シュシュのすべて』(2002)だ。
ただし、『
リリイ・シュシュ』が地方郊外に生きるということのリアリティ――どこへでもいけそうなのに、どこへもいけない――を、説得的な(リアルっぽい)映像でもって表象しようとするのに対し、『下妻』では、コメディに徹すること、地方郊外の田園地帯という空間のどうしようもない「
キッチュさ」をバカバカしく笑い、面白おかしく演出することに映画の主眼が置かれる。とはいえ、まさにそのことによってこの作品は――『
リリイ・シュシュ』とは全く違った意味で――地方郊外の「どうしようもなさ」のリアリティをうまく掬い取ることができているように思うのだ。アホ映画と笑えばよい。だが、そのアホさ加減は、地方郊外の生というものが抱え込まざるをえない類のアホさなのだということだ。