居場所ノススメ

  • 「ぷらっとほーむ」とは?

「ぷらっとほーむ」は、(不登校・ひきこもり等を含む)子ども・若者たちが通ってきて安心して過ごしたり学んだりすることができる居場所(フリースクール/フリースペース)として、今年5月に開設されました。山形市江南にある一軒の借家がそのスペースです。民間の通所型フリースクール/フリースペースとしては、県内でも数少ない試みの一つにあたります。
その基本理念は、「子ども・若者たちによる、子ども・若者たちのための居場所づくり」というもの。すなわち、家庭・学校・職場あるいは社会のなかに自分の居場所を見出せずに生きづらさを抱えているような子ども・若者たちが、自らの意志において自由に集い、安心できる生活のなか、自分に合ったライフスタイルやライフコースを模索し成長していけるような、子ども・若者たちの居場所づくりを意味します。
「ぷらっとほーむ」という名前もそこに由来します。第一に、居場所を求める子ども・若者たちが気軽に「ぷらっと」立ち寄れる「ホーム」=家庭のような温かい場でありたいということ、そして第二に、集ってきた子ども・若者たちがそこからそれぞれの自己実現に向けて多方向へと旅立っていけるような「プラットフォーム」=基地でありたいということ。そうした願いがこめられています。

  • この活動をはじめたきっかけは?

もともと私たちの出発点は、「不登校等の子どもたちの自立支援」を目的としたフリースクール開設・運営の経験にあります。県内初の民間通所型フリースクールであった「フリースペースSORA」(現在は「フリースクールSORA」に改称)がそれにあたりますが、そこでは「不登校・ひきこもり」を、家庭や学校に居場所を見出せないがゆえの現象と位置づけ、彼(彼女)らに対する居場所提供を活動の中心にすえていました。しかし、活動を通じて見えてきたのは、居場所がないのは「不登校等の子どもたち」だけではないという現実。自分の居場所を求めてフリースクールを訪れる人たちの何と多様なことか。居場所の意義とは、第一に、ありのままの自分でいられる(自分の存在が認められる)場であるということ、第二に、自分にも関与できる余地のある(自分の意味が認められる)場であるということ。登校している子どもも、社会参加している若者も、そこに、容易には自分の居場所を見出せないでいる、というのが活動していての実感としてありました。
そこで私たちは、「不登校等の子ども」に限らない、「居場所を求める子ども・若者たち全てに開かれた居場所づくり」というのを基本コンセプトとするフリースペースの開設・運営に着手したのでした。これが、山形市内で二つ目のフリースペースとなる「ぷらっとほーむ」誕生の沿革になります。
「ぷらっとほーむ」の開設・運営は、基本的にスタッフ2人(たきぐちかつのり/30歳、ときたあい/27歳)でひとつひとつ話し合いながら、自分たち自身のイニシアチヴで進めています。自分たちでリスクやコストも背負いながら、自分たちにしかできないもの、自分たちに固有のものを少しずつ形にしていくことの楽しさ、そして難しさ。その意味でこれは、年長世代の関与も専門家の関与もない、非専門家・若年世代による「ゼロからの居場所づくり」ということができます。
確かに、「居場所づくり」に関与している私たち自身にも、かつて「居場所」というものからひどく疎外され苦しんだ時期の記憶があります。しかしそれに愚痴をこぼしているだけでは何も変わらない。自分たちの存在と意味とを、誰かにお膳立てしてもらってそのおこぼれにすがって生きていくのではなく、自分たち自身の手で何らかの新しい価値やそれに基づいた場の創出にむけて動き出すこと。たとえそれが稚拙であれ、未熟であれ。そのような想いのもと、ごくごくささやかな形ではあるけれど、はじめの一歩を踏み出してみたわけです。

  • フリースペースの日常とは?

「ぷらっとほーむ」は通常、木曜から土曜日、13時から19時まで開いており、スタッフ2名が常に待機しています。現在は13歳から32歳までの約10余名の子ども・若者たちが日常的に集う居場所になっています。メンバーは、それぞれが好きな日の好きな時間に通ってきます。ほぼ毎日来る人もいれば、週に1日、月に1日程度という人も。ゆえに、みんなが集まり賑やかになる日もあれば、ほとんど人がおらず静かな日もあります。まさに、多様さが認められた空間なわけです。
共通のカリキュラムやメニューはなく、ここでどのように過ごすかは全くの自由。その自由のなかで、悩んだり迷ったりしながら、各自いろんなことに取り組み、その試行錯誤のなかで、自分に自信がもてるような大事な何かをお互いに身につけていきたい。そんなふうに考えています。
実際、メンバーの過ごしかたはさまざま。おしゃべりして過ごす人もいれば、インターネットを閲覧して過ごす人も。また、共通の本や映画を話題にあつく議論したり、モンテディオ山形の応援に出かけたり、隣県のフリースクールに遊びに行ったりと、フリースペースから飛び出して何かを楽しむような企画や活動も行っています。全ては、メンバーの創意です。
もちろん「何もしない」というのもあり。何かを始める前には、ゆっくり考えたり休んだりする時間がとても大事です。そしてその時間も人によってさまざま。傍から見れば無駄で無意味に見えるかもしれませんが、しかし、常に「生産せよ」「もっと速く」等と急かされながら生きざるをえない速度社会の私たちにとっては、世間的な役割期待から逃れ、自分のペースでゆったりと、同じ目線の仲間とともに、試行錯誤を重ねながら過ごせる時間・空間というのは、非常に貴重なのではないかと思います。何より、私たち自身にとってそうだったりします。

簡単に「ぷらっとほーむ」の活動について紹介してきましたが、興味をお持ちのかた、ぜひお気軽に遊びにいらして下さい。若年世代による、若年世代のための居場所づくりの活動はまだまだ始まったばかりで、まさに現在進行形。ともに同じ時間・空間を共有しながら、私たちの世代に固有の何か、新しい価値というものを少しずつ創りあげていければと思っています。*1

*1:『月刊・ほんきこ。』No.6(2003年12月号)