ミニコミを通じた居場所づくり

■現在、わたしたちは、山形県市町村課の委託事業「若者の移住受入体制支援事業」をはじめ、フォーラム山形との共催事業「シネマカルチャーサロン」、山形市コミュニティファンド市民活動支援補助金(公開プレゼンテーション)助成事業「非正規雇用の若者たちの居場所/学びの場づくり」など、特定のカテゴリーに照準した若者たちの居場所づくりの事業に取り組んでいる。今回は、それらを通じて構築されつつある、居場所づくりの方法論について記述してみたい。
■どんな方法かというと、それは「ミニコミ誌を通じた居場所づくり」とでも言うべきものである。ミニコミ誌とは、自主制作の雑誌のことで、マスコミ(新聞やテレビなど不特定多数向けの情報媒体)との対比で、特定少数向けの情報媒体という含みをもつ。自主制作ということはつまり、企画から取材、原稿書き、原稿の編集や構成、印刷、製本など、手間のかかる作業をすべて自分たちが手づくりでやらなければならないということである。だが、実はそこが重要だ。
■手づくりでやらならければならないということはつまり、自分たちで好きなようにつくることができるということであり、自分たち自身に関与の余地が十分にあるということである。それは、高度にシステム化され未来が予期可能な社会――自分の可能性を否定される世界――を生きる私たちにとって、お金を払ってでも手に入れたい価値である。その意味で、ミニコミ誌をつくるという過程そのものが、人びとに居場所を提供する重要な機会になりうる。
■また、ミニコミ誌の誌面そのものが、そこに原稿を寄せてくれた人びとにとってのかけがえのない居場所になりうる。個人化が進み、安定した帰属先や準拠集団というものが人びとから失われてしまった現在、私たちは誰しも、たとえそれが束の間のものであっても、自分に所属先を与えてくれるもの、自分をメンバーとして迎え入れてくれる場所に対しての強固なニーズを抱えている。誌面上の居場所とは、そんな私たちを柔らかく包摂してくれる空間になりうる。
■以上、私たちを惹きつけ、コミュニティ形成へといざなうミニコミ誌を、私たちは、街なかのカフェや映画館、公共施設などに頒布する。すると、それが放つ強いメッセージ――「移住者/文化/非正規/…」の居場所はここですよ!――に感応した人びとが、参加を希望し活動の場に姿を現すようになる。彼(女)はやがてミニコミ制作や執筆に参加するようになり・・・と、あとはその繰り返しだ。これが、私たちの「ミニコミを通じた居場所づくり」である。*1

*1:『ぷらっとほーむ通信』102号(2011年10月)