齋藤一成 『100円商店街の魔法』

100円商店街の魔法

100円商店街の魔法

中心市街地活性化事業「一〇〇円商店街」。要約すると、商店街全体を一つの「一〇〇円ショップ」に見立て、そこに位置する全店舗で店外に一〇〇円コーナーを設置し集客を図るという商店街活性化の取り組みである。街全体が会場とも言えるため、ユニークな一〇〇円商品――「こんなものもあんなものも一〇〇円!」――を求めて、客足は商店街の隅々まで及び、さらには個店の店内にまで伸びる。
これまで全国各地の四〇以上の商店街で実施され、現在もなお開催地を拡大し続ける、この感染力ゆたかな企画は、もとは、新庄市で商店街まちづくりに取り組む市民団体「NPO‐AMP」(二〇〇三年発足、現在はNPO法人)が発案したもの。本書は、新庄市役所職員でありながら、同法人理事長でもあるという「二足のわらじ」スタイルを実践する著者自らによる「一〇〇円商店街」入門である。
そもそも商店街とは、地域社会の生活基盤といえるもの。現在は郊外大型量販店に押されまくっているが、仮にそれらが撤退した場合には、地域の人びとにライフラインを提供できるのは地元の商店街以外にない。当然、商店街の存在意義は「商い」であるから、その存続には個々の商店の収益増大が不可欠である。とはいうものの、従来の行政主導まちづくりは、補助金を使ったイベントで集客には成功するものの、それを商店街の収益につなげることには失敗し続けてきた。
「一〇〇円商店街」がユニークなのはまさにこの収益増大の達成という点だ。補助金には頼らず、自分たちの街は自分たちで何とかしていこうという気概。その上で、店主たちのやる気を巧みに引き出し、それぞれが創意工夫に乗り出しやすい環境を整える。お茶屋の「抹茶シフォンケーキ」や理容店の「眉毛カット券」など、ユニークな「一〇〇円商品」群はその結晶だ。
山形発の価値が全国区でも高い評価を得る機会が重なっておきた「山形現象」。まちづくり版「山形現象」の全貌がここにある。*1

*1:山形新聞』2010年6月20日 掲載