「好きを仕事に」ができるまで。

■今年9月にスタートした「キャラクター化ビジネス・プロジェクト」。それぞれの現場で有意義な取り組みを行ってはいるが広報力に欠ける草の根の仕事人や活動家の人びとのニーズを、ビジネス手法で解決しようというのがその趣旨であり、このため、まずは、依頼者をキャラクター化したイラストをあしらった名刺――それは彼(女)が日常的に使用するであろう広報媒体である――の作成代行サービスを実施することにした。これが「キャラ化名刺プロジェクト」だ。
■プロジェクトの基本メンバーは、「ぷらほ」メンバー2人とスタッフ・滝口の3人。メンバー2人は、ともにこれまで「ぷらほ」の広報媒体において、キャラ化イラストレーターとして活躍してきた実績をもつ。ファンも多い。ただし、それらの多くは趣味の延長であったりボランティアであったりということで、対価を受け取る仕事として本格的かつ継続的に取り組んだ経験は皆無だ。ならば、その部分をスタッフが支援しようということになった。いわば、起業の支援だ。
■では、この「起業支援」とはいったい何か。「若者自立支援」を掲げる支援の現場などでは、一般に、「就労支援」の名のもと、無業の若者たちに、インターンシップや職場体験などの機会提供を通じて、「カイシャ」の論理――その言い替えが「就労意識」だ――を学習させ、雇い主に反抗したり脱落したりせず、長期にわたり勤務し続けるような従順な主体を形成していくことが目指される。「起業支援」はそれとは違う。そこで体得すべきは、自律した主体だからだ。
■実はそのことに、本当の意味で気づけたのは、プロジェクトの開始以後だ。これまで何度か、他者に頼まれてイラストを作成し、その対価を得た経験をもつ二人だったが、あくまでそれは単発の仕事として取り組んだだけ。たったひとつの仕事を、時間をふんだんに使って、自分の納得のいくまで何度も直し、作品として仕上げてきた。だが、今回それは通用しない。依頼主は一人だけではないし、要求水準も依頼主によってさまざま。「一石一鳥」ではとても間に合わないのだ。
■要は、時間規律の欠如である。複数の依頼主からのさまざまな依頼に、同時並行的に応えていくこと。それには、依頼主の要望を、具体的な作業工程の束に分解し、それらに優先順位をつけて配列し直し、効率よく処理していく構えが不可欠である。とはいえ、誰しもそれを最初からやれるわけではない。場数をこなし、その経験から自身の最適解を見つけ出していくしかないのである。私たちにできるのは、その場数を用意してやることだけだ。健闘を祈りたい。*1

*1:『ぷらっとほーむ通信』081号(2010年1月)