「ぷらほ」がブックガイドを編む理由。

山形市の市民活動支援基金山形市コミュニティ・ファンド」の平成21年度支援事業「株式会社シベール山形市文化芸術支援基金」の助成を受け、「若者向け山形の著作者紹介ガイドブック作成・発行」事業に取り組んでいくことになった。これは、山形出身あるいは山形在住の文化人や作家、山形を題材とする文化人や作家の作品をまとめて紹介する、若い世代向けのブックガイド集を作成し発行するという企画だ。その編集会議が、この7月よりスタートした。
■そもそもなぜそのような企画に取り組むのか。着想は、昨年度からのゼミ開催の経験による。ゼミに参加した者たちの多くが当初口にしたのが、「本は読まない」という言葉だった。稀に読書習慣を語る者もいたが、それも場当たり、趣味的に読んでいるだけ、しかもその内容は小説を中心とした物語に偏っており、不十分さを感じた。だが、悪いのは彼/彼女らではもちろんない。この社会が、「本の読みかた」について学ぶ機会を提供しないことが問題だ。
■「本の読みかた」とは、任意の一冊をどう読むか、ということだけを意味しない。そもそも何を目的に読むのか、そのためには何を読めばよいか、その本をどうやって手に入れるか、その本で得た知識とどうつきあうか等など、「本を読む」という行為の背後には、さまざまな選択の分岐点が存在している。とすれば、偶然見つけた本をただだらだら読む――そういう読書がダメだとはいわないが、それしか知らないのはダメだ――のではない、「読書の方法論」が必要である。
■残念ながら、そうした「読書の方法論」を明確に提示し体得させてくれるような学び(=読書教育)の場は、大学という教育機関以外には存在しない。小中学校、高等学校は、読書の時間や機会を強制することで、むしろ読書離れを促進している側面すらある。低学歴ゆえに大学にアクセスできない数多くの人びとが、学びを欲したその時点から学び始められるほとんど唯一の方法が読書であるのにも関わらず、である。上記の若年の惨状は、そうした事態に直結している。
■ではどうするか。必要なのに存在しないのなら、自分たちで存在させるまでだ。ということで、まずは若年に対する「本の世界」へのいざないとなるような、敷居の低いブックガイド集を制作することにしたわけである。この企画のユニークさは、第一に「活字が苦手」という点で当事者性をもつ同世代が編集しているということ、第二に自分が暮らす「山形」に関連するブックガイドであるということ、この二点に尽きる。完成を楽しみにしていてほしい。*1

*1:『ぷらっとほーむ通信』076号(2009年8月)