大学(ゼミ)一日体験、再び。

山形県の市民活動支援ファンド「やまがた社会貢献基金」の助成を受け7月より実施している若年支援事業「金曜ゼミ:アナタの知らないシャカイ」。助成を受けた事業の柱は、毎週の「社会ゼミ」開催以外にもうひとつあって、それが「社会体験ワークショップ」の開催である。その第1回目を、先月半ば、東北公益文科大学(酒田市)にて、渡辺暁雄准教授(社会学)とゼミOB/OGの5名の方々にご協力いただき「「大学ゼミ」体験ワークショップ」として実施した。
■実を言うと、渡辺ゼミにお世話になるのは、昨年度に引き続き、これが2回目。前回のゼミでは、渡辺ゼミOGの2名の方から報告用レジュメを準備してきてもらい、その報告を受けて議論を行った(ネタは「偽装はなぜ続発するか?」と「女子オタク論」)。どのような話し合いの場であれ、何らかの叩き台がなければ、意味のある議論は始められない。それゆえ、どんなに稚拙なそれであれ、「叩き台をつくる」ということそれ自体が、その場への大いなる貢献を意味する。
■つまり前回は、そういうとても大きなコスト負担を、渡辺ゼミに全面的にお任せしたうえでの「ゼミ体験」だったわけだ。しかしながらゼミは、報告を受けての議論だけでなく、その報告内容=叩き台を準備することにこそ、核心がある。そこで今回は、報告用レジュメをワークショップ参加者側で準備し、それをもとに「社会学ゼミ」を再現してもらうことにした。ゼミ報告は、参加を予定していた「ぷらほ」メンバーのIさん、Sさんに担ってもらうことになった。
■そして当日。Iさんからは「地方の同人誌即売会はなぜ衰退し続けるか?」、Sさんからは「「不登校」当事者とその周囲にかかる圧力」という内容のレジュメ報告をしてもらった。それぞれが、自らの(社会に対してもつ)疑問に改めて向き合い、それを言語化し、他者にわかりやすく伝えるために、論理的に再構成するということ。当然その過程で、同じ問題に取り組んだ過去の研究史を調べ、文献や資料を読むことも求められる。報告者の2人は、見事それを果たした。
■後日、報告者からは「かなり大変だったが、有意義な体験だった」との声をいただいた。またそれ以外の参加者からもユニークな感想をいただいた。その人は、普段一緒に過ごしている仲間のレジュメ報告を受けて、「自分ならどんな問いをたて、報告内容を組み立てるだろうか」と自問したそうである。「問いをたてる」ということは、社会との接点を手に入れるということ、社会の当事者になるということと同義である。これがゼミの力かと、びっくりさせられた。*1

*1:『ぷらっとほーむ通信』067号(2008年11月)