「金曜ゼミ」ができるまで。

■これまでも何度か書いてきたが、わたしたち若い世代の多くは、自分たちを取り巻く社会や政治のありよう、しくみ、成り立ちなどについて、よくは知らないままに生きている。知らなければ、当然使いこなすこともできない。そうなると、不条理な被害を受けても、泣き寝入りするしかない。もちろんそれは、無知を放置してきたわたしたちの側の責任でもあるが、それ以上に、知る機会や考える機会を与えられずにきたという環境要因が大きいと、わたしは思う。
■わたしたち若い世代が、自分たちの本当に知りたいこと、考えたいことを自由に学んでいくことができるような場、それを学ぶことでわたしたちがこの社会や他者と対峙し、それと主体的に関係していく力を身につけることができるような場、わたしたちを甘やかさず、ちゃんと切磋琢磨させてくれるエンパワーメントの場――そういった場こそが必要だ。何より、わたし自身が、そうした場をこころの底から渇望してきた「当事者」(ニーズのある人)の一人である。
■どうしても必要だと思うのに、誰もそれを準備してくれていない。そんなときはどうしたらいいか。「ぷらほ」ではこう考える。「それでも欲しいと思うなら、自分でつくればいい」。というわけで、つくることにした。そのために必要な資金は、今年度より新設された山形県の市民活動支援ファンド「やまがた社会貢献基金」から助成をいただいた。そういうわけで、7月より「ぷらほ」の新しい取り組み「金曜ゼミ:アナタの知らないシャカイ」が始まった。
■この企画は、毎週金曜18:30より、山形市江南公民館にて、市民(とりわけ若い世代)主体の自主ゼミを開催するというものである。複雑化し不透明化しているがゆえにわたしたちの想像を超えてしまっているような社会や他者、コミュニケーションのありよう。その実態について学んだり考えたりするために、社会のさまざまな現場や問題に関連する作品(書籍、映画など)を参加者それぞれが持ち寄り、話題提供された題材をもとにディスカッションを行うのである。
■7月のゼミでは、まず、ゼミ生各自の関心テーマ(それにそってゼミ報告を行う)を言語化してもらった。あがってきたのは、ワーキングプアと貧困、オタク文化の実情、ヨーロッパの社会や文化、マンガと法律(著作権法児童ポルノ法)、右翼/左翼のちがい、セックスワーク、環境ビジネス、宗教の機能、「障害」のつくられかた、メディア・リテラシーなどである。どのテーマも、未知なる社会について考えるには格好のテーマだ。今後の展開が楽しみである。*1

*1:『ぷらっとほーむ通信』064号(2008年8月)