「思い」は届くよどこまでも。

■四月に始動した企画、ドキュメンタリー映画ひめゆり自主上映会(6月21〜28日、会場:山形フォーラム)が、このほど、大盛況のうちに幕を下ろした。さまざまな人びとのご協力のおかげで、当初の目標を大幅に上回る、計727名の人びとにご入場いただき、観てもらうことができた。事業評価にあたって観客動員数というのはもちろん大事な基準だが、何より、自分たちの「思い」にこれだけの数の人たちが共鳴してくれたのだという事実が、ただただ嬉しい。
■ところで、1週間にわたる上映会が始まって発覚した、ある興味深いエピソードがある。上映初日、舞台挨拶のために、『ひめゆり』を製作したプロダクション・エイシアの富士さんに来ていただいた。もともと彼自身がいち観客として映画館でこの作品に触れ、そこで受け取った「思い」を、さらに別の誰かに手渡そうと思って動き始め、気がついたら製作会社スタッフとして公式に映画の広報に携わることになっていたのだという。山形へは、彼がチラシを届けたとのこと。
■そんなふうに届いた『ひめゆり』チラシの一枚を、「ぷらほ」スタッフの松井が偶然手にする。「なぜかはわからないけど、絶対に観なきゃいけない気がする」。そんな言葉とともに、「ぷらほ」メンバーに差し出されたチラシ。「Coccoのメッセージだ」「面白そうだよね」「わたしも観てみたいな」…。感染していく何か。だが、山形の映画館での上映予定はないという。あきらめるか。いや、どうしても観たい。じゃあどうする? 自分たちで上映しちゃえばいいじゃん!
■要約すると、以上のような道すじを経て、「ぷらほ」主催の上映企画が始動した。「忘れたいこと」を話してくれたおばあさんたちの「思い」が、いち観客であった富士さんを動かし、彼が撒いたチラシが松井にとどき、松井の「思い」が「ぷらほ」メンバーに伝わり、今度はそれが山形の人びとに届いていく。観客の人びとの一部は、作品を観た人から口コミで評判を聞いて足を運んだとのこと。さらには、上山や天童でも上映会を開きたい、との声まで聞こえてきた。
■ここにあるのは、「思い」のリレーだ。何としてでも誰かに伝えたい「思い」。そんな「思い」を抱いてしまったとき、わたしたちはつい「どうせ誰にも届くはずない、だから黙っていよう」などと予防線をはり、せっかく芽吹いた「思い」を枯らせてしまう。でもそれは違う。この上映会が一例だ。「思い」は伝わる。伝えたいことがあれば、吐き出してしまえばいい。空気なんか読まなくていい。そんなふうにして、私たちはこの社会をつくり変えていくのだ。*1

*1:『ぷらっとほーむ通信』063号(2008年7月)