赤坂憲雄 『岡本太郎の見た日本』
- 作者: 赤坂憲雄
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2007/06/26
- メディア: 単行本
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太郎の略歴には、一九三〇年代のパリに留学し、そこで「フランス人」として最先端の芸術家・思想家らと交遊したとある。とりわけ思想家ジョルジュ・バタイユとの関係が有名だが、ここからは「脱近代の思想家・芸術家」として太郎を読むことが可能だ。フランス現代思想で読む岡本太郎。だが、本書の焦点はそこにはない。
本書が着目するのは、同じパリでのフランス民族学の創始者マルセル・モースとの出会い、そして迫り来るファシズムに促されての太郎の「日本」への回帰である。「日本とは何か」を知ろうとする「民族学者」として太郎を見たとき、彼がしようとしたこと、彼の達成とは一体何であったのか。
太郎は戦後、縄文土器の発見を端緒として、東北や沖縄、韓国へと思索の旅を重ね、日本紀行三部作『日本再発見』『沖縄文化論』『神秘日本』にやがて結実することになる知の道行きを辿る。そこで太郎が描いた「日本」とは、東北日本/西南日本/南西諸島を基本的な分割線とした「いくつもの日本」であり、そこに流れ込みわだかまる「いくつものアジア」であった。
ここまでくれば「東北学」提唱者たる著者(東北芸術工科大学・東北文化研究センター所長)が本書を書かねばならなかった理由は明白だろう。「いくつもの日本」を掲げる「東北学」の先駆者としての岡本太郎。パリでも東京でもなく、東北の目線で太郎を読むこと。こうした思想の作法をこそ、私たちは本書より学ぶ必要がある。*1