『中国:隣りの大国とのつきあいかた』

■読了文献。71冊目。神保哲生宮台真司ほか『中国:隣りの大国とのつきあいかた』。居場所の厨房女子が隣国の社会に関してあまりに差別発言をかますものだから、少しだけでも読んでみようという気になって。A級戦犯断罪とは戦後の国際関係正常化のための日中両国政府による「手打ち」なのだという話と、外交の基本発想は「二国間外交の四者プレイ」でないとまずいという話が通奏低音になっていて、あとはその応用編といった印象。中国人口は16億まで膨らむらしいのだが、その規模で「統一国家」が保たれるという想定そのものの根拠がよくわからない。「民主化」か「独裁」かという議論の前に、複数の国家への分裂という事態に推移する可能性はないのだろうか。中国史上、分裂していた時期だって決して短くはないはずなのだ。「統一帝国」を正統と見なす何らかのイデオロギーがそこに働いているとは言えないだろうか。ヨーロッパ史をやってきた人間の目からは、そこが最大の謎である。