『太陽』

太陽 [DVD]

太陽 [DVD]

■観た映画。19本目。アレクサンドル・ソクーロフ『太陽』。「現人神」ヒロヒトの孤独と葛藤。彼から然るべき距離をとり、遠巻きに見つめる人びとのまなざしが非常に印象的。この距離とまなざしこそが「現人神」を社会的につくりあげている。進駐軍の人びとは、あるときはこうした文脈を踏まえずに、またあるときはこの文脈を利用するかたちで、恭しく創り上げられたこの距離を侵犯し、そうすることで「現人神」を虚構化していく。深海の底のような幻想的な都市爆撃のシーンとか、夜の廃墟の街を進む数台の車を俯瞰するシーンとかが、何だかとても美しい。知らず知らずのうちに自分のうちに創り上げられていた「終戦」のイメージに、静謐ではあるが、しかしものすごく濃密なカウンターをあてられた気分。いったい何を、自分は、自分のうちに創り上げていたのだろう。検証の余地あり。