『ボランティアの知』

ボランティアの知―実践としてのボランティア研究 (大阪大学新世紀セミナー)

ボランティアの知―実践としてのボランティア研究 (大阪大学新世紀セミナー)

■読了文献。64冊目。渥美公秀『ボランティアの知:実践としてのボランティア研究』。グループ・ダイナミックス(そのメタ理論が社会構成主義)を方法論として用いた災害支援ボランティアの研究。問題意識としてあるのは、安定した規範が遠のいたとき人びとはどのように振舞うのか(集合的即興ゲーム)、災害ボランティアの実力とは何か(「他でありえたかもしれない可能性」=規範の外部を暴き出す力)、平常時において有効な災害支援ボランティアの取り組みとは何か(防災とは言わない防災)、なぜボランティアとして救援に向かうのか(「ただ傍にいること」の意義)、等など。全てに共通しているのが「安定的な規範から遠ざかったとき人びとはいったいどのように振舞うのか」という問い。いろいろと示唆的。「よい理論ほど実践的なものはない」というグループ・ダイナミックスの発想(理論のもつ生成力によって理論を評価する)が非常に興味深い。現場の人間であり研究者でもある自分には、こうした前提が最もよく馴染む。「Act Locally, Think Abstractly」を地でいく本書の構成(エスノグラフィー/抽象化・理論化/現場への還流/エスノグラフィー/…)は、自分の実践/研究をまとめる際の参考になりそうだ。