『美しい都市・醜い都市』

美しい都市・醜い都市―現代景観論 (中公新書ラクレ)

美しい都市・醜い都市―現代景観論 (中公新書ラクレ)

■読了本。20冊目。五十嵐太郎『美しい都市・醜い都市:現代景観論』。上京のお供に。帰りの新幹線にて読む。「美しさ」や「安全性」を完備した「完全都市」=「過防備都市」への欲望が、各地で展開しつつある。だが、そうした欲望の行き着く先にあるのは、匿名性やプライバシーを完全に消去した安全で管理の行き届いたテーマパークのごときユートピアであり、それは平壌の美しさそのものだという。興味深かったのは、「醜い景観」狩りの背景にあるのが、イデオロギー闘争でもなんでもなく、新たな開発ネタへの利益誘導の論理――景観を美しく作りかえれば、街(不動産)の商品価値があがって、今までよりも商品が売れて、財政的にも万々歳ですよ――だとの指摘。これって、詐欺師がちらつかせる「おいしい話」そのままじゃないか。