『もう一つの地域社会論』

もう一つの地域社会論―酒田大火30年、「メディア文化の街」ふたたび

もう一つの地域社会論―酒田大火30年、「メディア文化の街」ふたたび

■読了本。15冊目。仲川秀樹『もう一つの地域社会論:酒田大火30年、「メディア文化の街」ふたたび』。1970年代に地方都市・酒田で花開いた「メディア文化」。その発信源となった中心商店街の映画館「グリーン・ハウス」が火元となった「酒田大火」によって、「メディア文化の街」としての可能性は失われてしまう。郊外化とモータリゼーションが地域商店街の地盤沈下をさらに推し進める。そして30年。沈黙を破り、かつて「大火」前の酒田の街で「メディア文化」の洗礼を受けた世代が、酒田を「メディア文化の街」として再生させるべく、新たな「メディア文化」の構築に向けた挑戦を開始する。それが「S.H.I.P:酒田発アイドル育成プロジェクト」である。とのこと。いろいろツッコミどころはあるのだが、簡単に二つだけ。一つ、「酒田大火」以前に存在したとされる「メディア文化」の根拠が「グリーン・ハウス」のみであり、しかも「グリーン・ハウス」をめぐる記述が当時酒田で過ごしたという著者の回想だけで、客観性に乏しい点。二つ、現在の「メディア文化」の証しとされる「S.H.I.P」が商店街や地域にもたらした「効果」がほぼ関係者の証言のみによって構成されている点で、客観性に乏しい点。これを「社会学」とか言っちゃっていいんだろうか。ついでに言うと、いろんな絡みが存在するはずの東北公益文科大学についての言及が意図的に回避されているっぽいのも気になるところ。