子ども・若者支援NPOの臨床社会学

戦後日本にいきる人びとを鼓舞し、動機づけ続けてきた「いい学校、いい会社、いい人生」という規範とそれを支える制度が、近年、急速なほころびを見せるようになりました。例えばそれは、「不登校」や「社会的ひきこもり」、「ニート」など、学校から社会への移行につまづく子どもや若者たちの問題に表れており、彼(女)らの社会的自立をどのように支援していくか、ということが、新たな社会的課題として浮上してきています。
私の研究テーマは、こうした課題に、学校でも行政でも企業でもなく、NPOや市民活動など、「市民」の立場からどう対処していくか、その方途をさぐり、それらを社会学的に記述することにあります。
 そう考える背景には、私自身が、5年前より、同世代による同世代のための自助的な支援活動として、山形市にてフリースペースを開設し、居場所を求める子ども・若者たちに学びや交流の機会を提供してきたという実践の経験があります。とはいえ、NPOの現場というのは、あらゆる意味において「主観的」です。そこで生まれた言葉や手法はその現場でしか流通せず、複数の現場の間での意思疎通すらままならない、というのが、支援現場の現状ではないかと感じます。自分自身の活動も含め、それらをより客観的に記述し評価すること、それが私の研究と実践の両方にまたがる課題です。
 実践者としての視点と研究者としての視点の両立は難しくもありますが、これまでにない新たな発想や刺激を豊かにもたらしてくれる貴重な機会になっています。この二重視点を、若年支援NPOの現場に持ち帰ることで、支援活動の活性化にもつなげられればと思います。