『世界と僕たちの、未来のために:森達也対談集』

世界と僕たちの、未来のために―森達也対談集

世界と僕たちの、未来のために―森達也対談集

■読んだ本。41冊目。森達也の対談集。姜尚中との対談での森の言葉「…メディアはずっと「ニュートラル」を標榜し、錦の御旗にしてきましたから。でも見方を変えれば、たとえば北朝鮮やオウムに限らず、最近ではあらゆる事件において、「被害者の気持ちになれ」という意味での表層的な当事者性が、攻撃性に転化しながら前面に出てきています。北朝鮮問題についても、「制裁しろ」と声高に叫ぶ彼らは、ニュートラルな志向はありません。被害者たちの心情を共有しているつもりなんです。だからね、当事者性って、僕はとても難しい課題だと思う」がおもしろい。芹沢一也の「「被害者」の誕生」と重なる議論。重松清との対談での「強調したいけれど、僕は当事者じゃないからこの映画を作れたんです。個の恨みと社会の規範が一致するのなら、そのほうが異常です。皆が当事者になる必要などないし、そもそもそんなことは無理なんです」という森の言葉は、例の「「当事者」間の抗争」について考える際のヒントになる。