『ジョゼと虎と魚たち』

ジョゼと虎と魚たち(通常版) [DVD]

ジョゼと虎と魚たち(通常版) [DVD]

DVDで『ジョゼと虎と魚たち』を観る。上野樹里目当てだったのだが、いざ観始めてみると、ジョゼ(池脇千鶴)の圧倒的な存在感に釘付け状態に。「障がい×恋愛」をネタにした映画(つーかマーケティング)だろ、どーせ。程度の気持ちで観始めたのだが、これら二つの意味づけ装置――「障がい」と「恋愛」――の両者をそれぞれ微妙にズラしていて、それがとても心地よかった。作中では、意味や物語や非日常ではなく、日常や風景や空気が淡々と積み重ねられ、描かれていく。二人の出会いにも、そして別れにも、過剰な意味づけや物語が付与されることはない。ただ、いつのまにか始まって、そしていつのまにか終わっただけ。そんな関係として、それは描かれる。劇的なことや過剰さや情熱なんて何もなかったたけれど、それでもともにいるその人のことが、そしてまたその人といる自分自身がとてもとても愛おしい――かつて確かにあった(がいつの間にかどこかへ行ってしまった)そんな感情を、不覚にもどこかで思い出してしまう。つーか、「真冬の旅行」とか「砂浜の散歩」とか「街道沿いのラブホ」とか、いちいちヤバい。体験を読み込みすぎてまたもや過剰反応。ところで、上野樹里はどこへ行った?