フリースクールスタッフ養成研修講座「フリースクールの創り方」参加報告

2月23日、24日の二日間にわたり、NPO法人フリースクール全国ネットワーク主催のフリースクールスタッフ養成研修講座「フリースクールの創り方」が東京で開催され、フリースペースSORAからは研修および交流のためスタッフの滝口が参加した。山形という地域で約1年にわたってSORAを運営してきて、そのなかで得た様々な経験やぶつかった問題などについて改めて反省し整理するためのひとつのきっかけ、自己分析のための視座が得られれば、と思いながら受講した。
講座の初日のプログラムは、午前中は「フリースクールとは何か」と題した東京シューレ理事長の奥地圭子さんの講演、午後からは全国各地の5つのフリースクール関係者(神戸フリースクール代表の田辺克之さん、ヒューマン・ハーバー主宰の木村清美さん、アトリエ・ゆうスタッフの栗原純子さん、フリースクール僕んち主宰の高橋徹さん、越谷らるご事務長の増田良枝さん)によるシンポジウム「フリースクールの創り方」。
奥地さんによれば、フリースクールの意義は、学校=公的制度の外部に子どもたちの育ちの場を自由に創出できるという点にある。日本におけるフリースクールの歩みは80年代半ばにようやくスタートするのだが、そこには二つの側面、すなわち①不登校支援としての側面、②欧米のフリースクール実践をリソースとした公教育への代案提示としての側面があった。それらの共通項は、子どもがイニシアチヴをとり大人がそれを支持するようなあり方だが、90年代後半になると「フリースクール」のインフレが生じてその出自や背景が多様化=不透明化し、フリースクールとは何かについて一律に語ることが困難となる。90年代のそうした受け皿の増加は、「ゆっくり休む」という選択肢が軽視されがちになるという点で、子どもたちにとってはデメリットとして機能してしまう危険性もある。とはいえ、公的援助も受けられるような形で子どもたちにとっての良質な選択肢の拡充がさらにいっそう必要なのだ、ということであった。
シンポジウムにおいては、5つのフリースクールそれぞれが簡単に会の沿革や活動の紹介を行った後、参加者との間で質疑応答が行われた。地域性の差異などをも反映してか、それぞれが個性豊かなフリースクール運営を行っている、というのが感想。公的規制がない分、主宰者の思想が居場所の設計に直接反映されるのだろうと思う。質疑応答においては、ボランティア・スタッフの養成研修に関してはどうしているか、フリースクールで受け容れる子どもに年齢制限を設けるべきかどうか、(医療との関連も含めて)どんな子どもでも受け容れているのかどうか、通学しながらフリースクールに通うことをどう考えるか、などなどフリースクールを運営していると必ず遭遇するであろう問題提起が為され、それぞれに関して各フリースクールの考え方と対処法とが具体的に示された。SORAでも何度も話題にのぼっている問題であり、非常に参考になったところである。
その後、夕食をはさんで参加者同士の交流会が開かれた。東京シューレはじめ三つのフリースクールの自主制作VTRを観賞した後、参加者ひとりひとりが自己紹介。多様な人たちがフリースクール創りに関心を抱いているのだと改めて実感。参加者が地元に戻りそれぞれフリースクールを創設すれば社会は大きく変わっていくであろう等という冗談も交わされ、全国各地に仲間がいることに大いに勇気付けられた。


二日目のプログラムは、午前中が東京シューレ現役生4人およびOB4人による講演「子ども・OBの声を聞いてみよう」、午後からは三つの分科会に分かれてテーマごとにグループ討論が行われた。滝口が参加した第一分科会のテーマは「フリースクールの設立・運営をどうするか」。
東京シューレ現役生及びOBの方々からは、自身の不登校経験をめぐる話題の他、東京シューレでどのような生活を送っていたか、そのどこが良かったか、また現在どのような仕事に取り組んでいるのか等の紹介があった。皆ユーモアあふれる語り手で、会場から何度も笑い声が沸いていた。話を聞いて思ったのは、様々なことを自分たち自身で選択し決定できる場である=決定権が子どもたち自身にあるということがフリースクールの最大の魅力になっているらしいということであった。参加者との質疑応答に関しては、フリースクールの問題点は?との質問に対する答え「主宰者の独裁=自己満足に陥ってしまう危険性に留意すべし」というのが非常に印象的であった。
最後のグループ討論、第一分科会「フリースクールの設立・運営をどうするか」では、東京シューレスタッフの中村さんによるフリースクール運営形態に関する講義の後、神戸フリースクールの田辺さんから神戸フリースクールの運営方法について、助成財団IYFスタッフの鈴木さんから助成金の活用方法について、それぞれ説明を受けた。それらを受けて、フリースクールの設立/運営資金をどうやって調達するか、親の会とはどのような関係を築いていくのが望ましいか、など運営上の具体的な論点を巡っての質疑応答が為された。とりわけ後者の問題に関しては、東京シューレの奥地さんからの「フリースクールは親たちと共に創っていくという“親立”であるべきで、親にも参画してもらわないと運営は困難を極める」という発言に深く考えさせられた。
一泊二日の講座は本当にあっという間に終了。具体的にもっと深く突っ込んで聞きたいこと等がないわけではなかったが、様々なことを再考するきっかけとなった有意義な二日間だった。今後SORAを子どもたちにとってよりよい居場所に創り上げていくために活かしていきたいと思う。*1

*1:『SORA模様』2002年3月 第11号