北沢栄 『官僚利権』
- 作者: 北沢栄
- 出版社/メーカー: 実業之日本社
- 発売日: 2010/05/20
- メディア: 単行本
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特別会計とは、国の基本的経費を賄う一般会計とは別に設けられ、特別の必要(例えば、道路・空港整備、年金管理、財政投融資など)によって区分経理され、所管府省庁によって管理・運用されている会計のこと。現時点では二十一の特別会計が存在し、ガソリン税などの目的税、保険料などを財源に特定の事業を実施している。
著者の試算では、その実質的な資金規模は一般会計(純計)三七・一兆円の四・六倍、(純計)一六九・四兆円にあたる(二〇〇九年度予算)。しかも、一般会計の負債状況が約三五〇兆円の債務超過(財政赤字)であるのに対し、特別会計のそれは約一〇〇兆円の資産超過(財政余剰)という潤沢さである。家計にたとえるなら、巨額かつ豊富なヘソクリに等しい。
問題は、このヘソクリが、それを管理・運用する各府省庁により、官僚の「天下り」ルート確保に使用されている点にある。彼らは、「随意契約」という手法で独立行政法人を養い、それが今度は傘下の系列公益法人に業務を委託し、さらにはそうした法人群が関連企業に仕事を発注する。つまり、特別会計とは、官僚たちの天下りネットワークの資金源なのである。この問題の構造を、あらゆる角度からあぶりだし、丁寧に可視化したところに本書の最大の意義がある。
これらは、著者のライフワークともいえる息の長い取り組みによって初めて可能となったものだ。公益法人や独立行政法人、天下り/渡りなど、個別の問題は、すべてがこの官僚利権ネットワークを根源にもつ。その全体構造を俯瞰できる本書は、行政改革の実態に関する入門書として最適である。*1