『18歳が政治を変える!』

■読了文献。105冊目。高橋亮平・小林庸平・菅源太郎特定非営利活動法人Rights『18歳が政治を変える!:ユース・デモクラシーとポリティカル・リテラシーの構築』。2005年に「人口減少社会」に突入した日本社会。ところが、そうした現状にあっても、日本の社会経済システムは、相変わらず人口・経済の右肩上がりを前提とした旧態依然のものにとどまっている。そんな中、深刻化しているのが、世代間格差の問題である。例えば、財政赤字の拡大や環境問題の深刻化などは若い世代への負担押し付けであり、賦課方式の年金をはじめとする社会保障制度でも受益と負担の世代間格差が拡大している。教育や労働など若者への社会保護支出は先進国中例を見ない低水準だし、失業や非正規雇用も若い世代に特に顕著である。何より問題なのは、そうした制度が、高齢者の意見が反映されやすい政治のしくみのもとで決められてきたということだ。高齢化が進めば、この傾向(シルバー・デモクラシー)はさらに強まる。世代間格差――若者に負担転嫁する社会――を解消していくためには、ユース・デモクラシーの構築が急務である。本書は、この問題に取り組むNPO法人「Rights」(東京都)の活動を中心に、ユース・デモクラシーの実現に向けたさまざまな人びとによるユニークな取り組みを多岐にわたり紹介したものである。彼らの主たる目標は「18歳選挙権の実現」。国民投票法の成立(2007年)を受けて、半ば達成されつつあるこの課題は、しかしながら、ただ単に選挙権を若者に与えただけでは不十分だ。彼らが手にした一票を有効に活用できるだけの、社会に関する問題意識や主権者意識、誰に投票するかを自分で決定するための判断力――彼らはこれを「ポリティカル・リテラシー」と呼ぶ――を学び、体得できるような場や機会を社会のあちこちにつくっていく必要がある。政治教育や主権者教育、市民教育と呼ばれる取り組みだ。イデオロギー論争に明け暮れ、結果的に不作為が放置されてきた日本の政治教育。この空白地帯をこそ、私たちはまずユース・デモクラシーのフロンティアにしていく必要があろう。