『非武装のPKO』

非武装のPKO

非武装のPKO

■読了文献。104冊目。君島東彦編著『非武装のPKO:NGO非暴力平和隊の理念と活動』。PKO(国連平和維持活動)とは、紛争の平和的解決をはかるべく、小規模の軍隊を現地に派遣し、当事者たちが再び紛争状態に陥ってしまわぬよう行う監視活動や「とりあえずの平和」を恒久的なものにするための平和維持活動などを実施することを指す。その肝は、武装した人びとが、中立の立場nonpartisanshipで現地入りし、その武力を担保に、紛争当事者たちを威圧しつつ、平和の構築や維持にあたるという点にある。ところが、武装が命綱ともいえるPKOの活動を、非武装で行う国際NGOが存在する。彼らの名は「非暴力平和隊(Nonviolent Peaceforce:以下NPと略称)」。2002年にインドで発足、地域紛争の非暴力的な解決をミッションとし、紛争地――具体的にはスリランカ、フィリピン(ミンダナオ島)、グアテマラ、コロンビア――に世界各地のボランティアからなる非武装・非暴力のチームを派遣。そこで彼らは、紛争地域の人びとが自分たちの力で問題に立ち向かっていけるようにするために、現地の非暴力運動体・組織とのネットワークをつくりながら、住民たちへの支えを提供する。具体的には、護衛的同行(それにより地元の平和活動家や難民などを狙う暴力を思いとどまらせる)や国際的監視(デモや集会などに立ち会い国際社会の目として機能することで、それへの妨害を抑止する)、非暴力・人権教育プログラムの提供(長期の紛争状態にある地域の、平和を知らない子どもたちへの教育の提供)などがその内実だ。彼らの言葉で言えば「平和をつくるmaking peace」ではなく「平和のための空間をつくるmaking space for peace」のが主眼で、大事なのは紛争地の人びとによる自治・自決権の促進である。本書はこのNPの理念と活動とを中間総括したものだ。印象的なのは、本書に頻出する「われわれが戦争にNOと言うとき、YESと言えるのは何か」との問いかけだ。教条的な9条護憲をしか対置できないできた私たち日本人こそ、彼らが提示するYESの内実に学ぶ必要があろう。