■読了文献。28冊目。
広井良典『脱「ア」入欧:
アメリカは本当に「自由」の国か』。医療経済や
社会保障を専門とする著者が、八〇年代末と〇〇年代初めに
アメリカとヨーロッパに滞在したときの「生活実感」をベースに、それぞれの社会/社会づくりのありかたを対比的に論じ、これまで前者をモデルとしてきた日本に、目指すべき社会像の転換――ヨーロッパ・モデルの採用――を促すものである。では、社会モデルという点で、
アメリカとヨーロッパでは何が違うのだろうか。簡単にまとめると、
アメリカ型モデルとは、「強い成長志向と環境配慮の薄さ、小さな政府、貧富差の拡大(と高犯罪率)」といった特徴をもつ。一言で言うと「純粋な資本主義」である。一方、ヨーロッパ型モデルとは、「(相対的に)
大きな政府」があり、それがさまざまな
社会保障や
所得再分配政策を行う、というものだ。著者はこれを「
福祉国家的な資本主義」と呼び、目指すべきはこちらだと語る。ヨーロッパ型モデルの制度・政策面は、これまでも著者の手で「定常型社会=持続可能な福祉社会」として理論化されてきた。本書は、それを「生活実感」という側面から補強するものである。ヨーロッパの人びとの「生活の豊かさ」に、私たちもまた学ぼう。