『自民党政治の終わり』

自民党政治の終わり (ちくま新書)

自民党政治の終わり (ちくま新書)

■読了文献。176冊目。野中尚人『自民党政治の終わり』。自民党結党(1955年)以後、1970年頃までに形成された「自民党システム」(行政官僚制と党との緊密な協働、多様な分配政策、ボトム・アップ型の党内政策決定メカニズム、派閥人事、族議員と「鉄の三角形」中心の政策決定、自社両党による国対政治などからなる統治メカニズムのこと)。本書は、著者独自の概念であるこの「自民党システム」を手がかりに、混迷する自民党政治の現在を読み解く試みである。著者いわく、この「自民党システム」は冷戦下で発達し進化を遂げた社会的構築物である。当然ながら、文脈が変わればそれは最適解ではなくなる。現在の自民党政治の混迷もまた、文脈の変容――具体的には冷戦の終わり――に起因する、と著者は断言する。分析されているのは、システムの終焉だけではない。遠く江戸時代にまで遡る縦軸の視点と、国際比較を駆使した横軸の視点。近視眼的に現代日本政治の諸相だけを取り出してわかった気になるのではなく、異なる時間や空間の多様性の中に位置づけることで、現代日本政治の固有性が何なのかを析出していく。政治の混迷を読み解く確かな視座を、そこから得ることができるだろう。