『エロ街道をゆく』

エロ街道をゆく―横丁の性科学 (ちくま文庫)

エロ街道をゆく―横丁の性科学 (ちくま文庫)

■読了文献。145冊目。松沢呉一『エロ街道をゆく:横丁の性科学』。「性風俗ライター」として知られる著者のデビュー作。九〇年代初めの性風俗産業にまつわるさまざまな現場――SM、写真投稿雑誌、前立腺マッサージ、女装、コンドーム専門店、ブルセラ、アダルト・ショップ、スカトロなどー―を訪れ、それらを体験取材したフィールドワークの記録である。内容は、エイズ検査に訪れた保健所で居合わせた女子をナンパしたり、SMクラブの女王様にうっかり肛門を調教されたり、「裸の触れ合い」と称して全裸インタビューに応じてくれる女子を募集し何故かそれが実現してしまったり、冗談のような企画レポートばかりなのだが、その奥底にある著者の動機は割と真面目なものである。過激であったり極端であったりするように見える「性」の現場のひとつひとつは、当然ながら、そこに関わり、それを糧にする人々の「生」の現場でもある。その世界に実際に触れながら、そこで生きる人々の生のありようを真摯に伝えようとする著者のまなざしが、何だかとても温かい。