■読了文献。131冊目。
松本哉『貧乏人の逆襲!:タダで生きる方法』。「
格差社会」が語られるようになって早一〇年。かつての「一億層
中流」意識はどこかへ消え、代わって「勝ち組/負け組」なる語彙が人々の間に蔓延した。「負け組」=不安定労働者への差別が常態化し、「手を抜くとあんなふうになるぞ」との強迫のもとに、正社員たちもまた過酷な労働・消費に駆り立てられる。これが私たちの現在だ。そんな世の中に対し、本書は「勝ち組なんてどこにもいない」と喝破。正社員だろうが
派遣社員だろうが、平日は低賃金でこき使われ、休日は消費に駆り立てられることに変わりはない。所詮みんな貧乏人。だったら、そんな「誰も勝てない競争社会」はさっさと降りて、自分たちで「貧乏人が好き勝手に生きられる社会」をつくってしまおう、これが本書の核心にあるメッセージである。高円寺でリサイクルショップ「
素人の乱」を主催し、貧乏人の生活拠点づくりに取り組んでいる著者ならではの主張である。「革命をおこそう」ではなく、「革命後の世界をつくってしまおう」というのがユニークだ。希望は、「貧乏」だ。