『ネオリベラリズムの精神分析』

ネオリベラリズムの精神分析―なぜ伝統や文化が求められるのか (光文社新書)

ネオリベラリズムの精神分析―なぜ伝統や文化が求められるのか (光文社新書)

■読了文献。84冊目。樫村愛子ネオリベラリズム精神分析:なぜ伝統や文化が求められるのか』。再帰性と恒常性。前者の過剰と後者の解体が、人びとが(動物ではなく)人間であるための条件を掘り崩している。したがって、人間であることにとどまろうとするのであれば、貧しくない再帰性・恒常性が保たれており、そこで信頼や落ち着きや余裕が醸成されるような場や機会(「メタ・ライフ・ポリティクス」の場)が、社会的に創出されなければならない。というのが本書の基本プロット。著者の精神分析への信仰告白を、社会学系のさまざまな理論や言説で補強したもの。わかりやすく書いたつもりなのだろうが、精神分析に関する前提を欠く身としてはかなり読みづらい。そもそも「メタ・ライフ・ポリティクス」は、荻野達史(社会運動研究)の居場所研究からの引用。荻野氏にこそ(居場所のフィールド研究の後に)展開してほしいテーマだと思った。