『精神科医になる』

精神科医になる―患者を“わかる”ということ (中公新書)

精神科医になる―患者を“わかる”ということ (中公新書)

■読了本。90冊目。『精神科医になる』。現役の精神科医による「精神科医/医療」入門。精神科医が引き受けざるを得ない重層的な葛藤。第一次の葛藤:自らに課せられた社会防衛的役割(A)と患者への治療的役割(B)のはざまにある葛藤。後者(B)に関しては、さらに第二次の葛藤:医学的パターナリズム(C)と反パターナリズム(D)における葛藤。前者(C)の立場においては、疾患(E)と<甘え>(F)とをどう規定し、どう対処するかという葛藤。現実の未規定性のようなものに寄り添おうとすればするほど、葛藤が多層化され足場が不安定になっていくという構造。非常に興味深い発想。こうした着想を応用すれば、居場所スタッフが置かれている錯綜した立ち位置をもうまく記述できるかもしれない。本当にありがとうございました。