『脱フリーター社会』

脱フリーター社会―大人たちにできること

脱フリーター社会―大人たちにできること

■読了本。88冊目。『脱フリーター社会』。第Ⅰ部が経済学者たる著者の、第Ⅱ部が著者のゼミ生たちの手による著述。若年非正規労働者の増加の背景にあるのは、不況下の企業が「日本型雇用調整慣行」(新規若年正社員採用抑制/既存中高年正社員雇用維持+サービス残業増加)による労働費用抑制策をとっていることにあるという現状分析。ゆえに「脱フリーター社会」構築のためには、既存雇用維持&サービス残業増大がコスト的に割高になるような法制度を整備し、企業が新規若年正社員を雇用するインセンティヴを創出することが必要と政策提言。結論それ自体は「正社員と非正社員の賃金/仕事格差の是正や解消」とごくごく常識的なものだが、議論の過程で出てくる「サービス残業」や「最低賃金制度」への着目が面白かった。非常に気になったのが、「フリーター」を「未熟練労働者」「勤労意欲の高くない労働者」と同一視する前提。この前提はもっとちゃんと疑ったほうがよくないか。というか、ちゃんと疑わないと「正社員と非正社員の賃金/仕事格差の正当性」に根拠を提供することになってしまうんではないか。