『不安型ナショナリズムの時代』

■読んだ本。76冊目。『不安型ナショナリズムの時代』。戦後の日本、韓国、中国の現代史を、「開発主義」という観点から比較史的に整理し、その三者三様の展開形態との関連で、昨今の三国の若年層のナショナリズムを解釈しようとする試み。平たく言うと、ナショナリズムの主戦場となっている「歴史問題」は、進行する「社会流動化」がもたらす「不安」を慰撫するために持ち出された「擬似問題」であり、本来であれば目を向けるべきは、それぞれの現代史のなかの「高度成長」のありかたなのだという。マクロ経済学とかリフレ派の中の人たちいわく「戦後日本の高度経済成長を「開発主義」で捉えるのは間違い」とのことだが、共通の軸をおいて東アジアの現代史を比較史的に検討する作業自体は貴重だと思う。「開発主義」でないのだとすれば、戦後日本の「高度成長型ナショナリズム」はどのように位置づけられるのだろうか。