居場所づくりの現場から 〜フリースペースの活動から見えること〜

不登校の子どもたちの居場所づくりとして活動をスタートさせたフリースペースSORA。開設して二年目に入った現在では、まったく学校に行っていない子たちのみならず、普段は学校に通っている子や就職して働いている子なども集まってくる、子どもたちの出会いと交流のスペースとなっています。
そうした中での夏休み、SORAは新たな試みや企画にチャレンジしました。その一つが、7月末に行われた「月山弓張平お泊まり会」です。弓張平にコテージを借り、そこで一泊して皆でバーベキューをしたり自然体験をしたりして楽しんでこようというもの。保護者からの提案でスタートしたこの企画は、事前の準備から当日の運営にいたるまで、保護者会が中心となりそれをスタッフがお手伝いするというかたちで進められました。SORAではこのように、「言い出した者が責任をもって企画・運営を行う=他人任せの活動はしない」というのをモットーにしているのです。
当日は快晴で、しかも幸運なことに月山湖の花火大会当日。全部で20人ほどが集まりました。そこでは、現在のSORAのメンバーとSORAのOGの子たちが初めて会う場面があったり、OGの子たちどうしの久しぶりの再会の場面があったりするなど思わずこれまでの活動やその中でのいろんな出来事を振り返ってしまいました。
ひとしきり話したり騒いだりしてバーベキューを楽しんだ後には、花火の見える場所までてくてく歩いて出かけました。しばらく歩いてようやくちょっとだけ見えるようになった打ち上げ花火に、皆が我を忘れて魅入っていたようです。地べたに座って見上げた空には、普段はお目にかかれないような満天の星。花火よりそちらに感激した子どもたちも多かったようでした。また、帰り道にはゆらゆらと舞う蛍を見つけることもできて、いつもは体験できないようなすてきな夜を過ごしてきました。
このように、参加者(子どもも大人も)がそれぞれ無理なく楽しみ、ホッとできる時間を過ごせてきたのではないかと思います。私たちとしては、いろんな意味においてSORAの原点を確認できた、有意義な企画だったと感じています。

しかし、SORAの活動すべてがこのように順風満帆に進んでいるわけでは決してありません。特に頭を悩ませているのが、フリースペースの財政運営についてです。
もともとSORAは、親たちの団体「不登校親の会山形県ネットワーク」が、不登校の子どもたちの居場所として設立したフリースクール不登校・ひきこもりの問題に悩む親たち(つまりは当事者)が、自分たち自身で直接不登校・ひきこもりの子たちを支えていこうとして創設したものです。開設後のフリースペースの運営も、基本的には当事者である親たちが自分たち自身で支えていくべきという発想でやってきました。
ところが、こうした当事者主義の発想では、通ってきている子どもたちの保護者のみが居場所を維持するための財政負担を過度に背負ってしまうことになります。結果的に負担が大きくなり敷居が高くなってしまって、利用しづらくなっているという逆説。これでは、金銭的に余裕のある家庭の子どもしかフリースペースにアクセスできないことになってしまいます。
文科省の言を待つまでもなく、現在では「不登校は誰にでも起こり得る」ことでありそうであればこそ、一部の人たちしか頼りにできないフリースクールでは本来、支援の在り方としては不十分なわけです。では一体どうするか。
不登校・ひきこもりに悩む子どもや若者たちの支援は、社会全体が真摯に取り組むべき課題であると、SORAは考えます。であるが故に、この問題への取り組みというのは、社会全体が支えていくべき類のもの。一部の当事者だけで支え続けられるものではないと思うのです。
そうしたことを考えていた矢先、SORAの理念や活動を理解下さる一般の方々数名より、居場所づくりの活動を今後も地域社会の中に維持し続けていってほしい、そのためにも定期的に財政援助をさせてほしい、との大変ありがたい言葉をいただきました。直接の当事者であるわけではない、それでも、自分たちの住むこの社会を、自分たち自身の関与によって少しでも皆が生きやすい社会に造りかえていきたいという、その想いがとてもとても温かく、これまで突き当たってきた辛さや苦しさが一度に昇華されたようなそんな気分でした。こうした市民の方々の想いがうまく合流すれば、きっと私たちは自分たち自身で社会をより良く変えていける。そんなふうにも思いました。
だからといって、財政運営の困難がなくなったわけでは全くなく、依然として試行錯誤は続いています。「自分たちで自分たちの社会をより良く変えていこう」という前向きな気持ちのすてきな人たちと、新たに出会えることを期待しつつ、私たちスタッフも日々の活動に取り組んでいきたいと思っています。
興味をお持ちの方、いっしょに今後のSORAを、ひいては今後の地域社会の在り方をデザインしてみませんか?
お待ちしておりますので、ぜひ気軽に遊びに来て下さい。*1

*1:『月刊ほいづん』2002年9月 第28号